原文
ғэ ньивӈ х̵ат итнд.
чӈыр̌ лу нуд лу,
пал лу нуд лу вотьир̌,
тыӈанк ньивгун тораф потьир̌,
ньи луӈ эр̌ӄӈ пыр̌к идыд.
напы-напы х̵унвд айӄ х̵уд.
х̵уд ғэ ньиғв даф х̵ат итт.
х̵уд ғэ ньиғв даф х̵ат итт.
ғэньивгун, вэ, ғэньивгун мир̌н(?), мир̌н(?),
к’лаӈи ӈахт,
п’и р̌лаӈиғун пыр̌к, мин п’и р̌лаӈиғун ӈахӄар̌.
уньғыр лар̌т(?), мин, мин ҳомих, уньғыр латт,
ньин анкыфк вит,
т’лаӈиғун х̵уррат х̵укрукр̌тоҳ,
т’лаӈиғун х̵уррат ньмат х̵уррат,
куӈ мин ҳомих,
амамр̌ к’ныгр̌ уйғир̌, йуньғыр̌,
уньғыр уйғэ, вир̌ т’лаӈиғун ӈағр̌,
х̵ымдьит, х̵уд ғэ ньивгун фуру.
йаӈ р̌ы выр̌к индыд.
тыӈанк, ньин луӈ эр̌ӄ ньивгун,
луӈ эр̌ӄ ньивгун к’эрайд, вот,
туӈ орӈор̌кун чорӈ х̵ат итт ӄ’алгун,
чорӈ х̵ат итт ӄ’алгун,
ин, тувӈ, ладғин ҳаура,
кофтьигин ҳаура, одьун ҳаура,
х̵аӈа, энда асӄаӈ, ин р̌аӈҕэғ̧лӈ, х̵уд,
махтур̌кир̌ ғэньивгун ғэд фуру,
таф п’ир̌ х̵унвдата,
таф п’ир̌ х̵унвдата, ғэньивгун ғэдғун,
таф п’иӈа,
таф п’иӈа, йымк, вир̌, ир̌кт фэрор̌,
йаки йайвыр̌, ир̌кт фэӈа,
п’р̌ыӈа эғ̧лӈ уйғэ!
йаки ӄағ̧йор̌ ӄ’ойур̌, эғ̧лӈ уйғэ,
йасӄ уйғэ, кузр̌ льэррымӈы йасӄ уйғэ,
х̵аӈа наф, х̵атот,
х̵у эғ̧лӈ, тьаӄ ху эғ̧лӈ х̵аӈа, х̵уӈ,
эғ̧лӈ уйғиӈы х̵у даф
х̵уӈ ғэньив даф ӄ’омироҳ,
ньивгун х̵устоҳ вит,
чҳар̌ тата йанта х̵аӈы,
х̵у дафтоҳ р̌ак пай:
“пыы, пыы, пыы,
тьоо, тьоо, тьоо”
х̵ымдьир̌ эғ̧лӈ выпыд фуру.
х̵уз мироҳ,
мытьулк эғ̧лӈ ӄағ̧йура.
ағр̌тьиӈ ағр̌тьиӈ уйғид,
эғ̧лӈ ау мы ҕаврӈы х̵у дафтоҳ,
х̵у ғэ ньив дафтоҳ.
х̵аӈа х̵ымдьир̌, наӈгвул, эғ̧л выпыд фуру.
х̵аӈа наф,
чам ньиғвӈ,
чам ньивӈ, тымы фиӈы, чам ньиғвӈ,
х̵уӈ чамӈ ӄар̌,
луӈ эр̌ӄтоҳ вир̌ чам луд,
чам луӈ итнд фуру:
“х̵ы, х̵уӈ орӈор̌ эғ̧лӈ,
х̵а мамғ̧ать ньэн быр̌к,
таф п’эзавр̌ тус п’иӈа,
мраӈифкэ, вир̌ ин эғ̧лӈ эньӄарр̌ р̌ор̌пыд наф йайвуд фуру,
наф ах, ах йаӈ ычх к’эгуйныф пар̌к х̵ад фуру,
ах пилаӈ р̌аӈҕ муд”
х̵ар̌ х̵у чамӈ итнд фуру, ах,
ғэт ах р̌ор̌вит х̵у мамғ̧ать,
мраӈир̌ наф, вир̌, о... орӈор̌ эғ̧лӈ эньӄӈарр̌ р̌ор̌ п’р̌ыр̌,
п’эғ̧лӈ к’эр̌ вандуд фуру,
х̵арор̌ наф иғз йыч.. ычх иғмд фуру.
х̵уӈ, х̵у нивгун,
чайро вит, йаӈафӄғун, чайроҳ вид.
чай эр̌ӄтоҳ вит ивдғун фуру.
мамғ̧ать ньэнӈ выр̌к п’эзавд фуру.
чай эр̌ӄтоҳ, х̵у ғэ ньивгун,
нухтыт, чай эр̌ӄтоҳ видғун фуру.
х̵унығун лу, энакғун лу,
х̵ы, нухтыт вийву ғэ ньивгун и,
п’аньҳ аздғун, п’аньҳ аздғун:
“тулкыс, тулкыс, тулкыс”
п’аньҳ азт видғун.
икы к’лы эр̌ӄтоҳ,
ғэ ньивгун нухтыт вийвудғун.
“тулкыс, тулкыс, тулкыс”-
х̵ымдьир̌, п’аньҳ азд фуру.
“йандӈа, ку тулкыс ыӈра,
п’р̌аф пинд ла, йанр̌ уйғид ӈа,
“тулкыс, тулкыс, тулкыс”-
х̵ымдьит ӄ’ойут,
п’аньҳ азт видғун фуру, нухтыт.
ньи х̵у наӈт выр̌к ах мыдра, ту т’ылгур̌,
ғэ ньив т’ылгур̌ п’уру туд.
訳
ひとさらいの化け物
ゲニグヴンというんだ。草だろうか、何なのだろうか、
山だろうか、何なのだろうか、よく似ていたよ。
昔、人間の(つくった)冬住居にとてもよく似ていた(という話だ)。
私の(故郷である)ルン地方にだけ(そんなようなものは)見かけたものだ。
(その頃は)まだそれは立っていたはずだ。
それは「ゲニグヴンの家」と言っていた。
それは「ゲニグヴンの家」と言っていた。
ゲニグヴンは、ゲニグヴンは私たちの、…私たちの、
トナカイを追ってくるんだ。
自分のトナカイばかり、私たちは自分のトナカイばかり追いかける(?)
影が立っていて、私たち、私たちのそばに影が立っている。
私たちはだいぶ以前に行ったのだが。
トナカイは群れで、はあちこち動きまわっていた。
トナカイたちは怖がって動きまわっていた。
となりに、私たちのすぐそばに
歩いていた。そいつには影も
影もないのだ。行ってトナカイたちの毛皮を、
こうやって(とる)、これがゲニグヴン(「取る・人間」の意)なのだそうだ。
そいつの戸口だけが見えるのだ。
昔、私たちルン地方のひとびとは、
ルン地方のひとびとはこう話していた。
ここのウイルタ人たちは「チョルン(トナカイの意)」という氏族名だった。
チョルンという氏族だった。
彼らは兄弟だった。ひとりはラドギンという名だった。
コフチギンという名だった、それからオジュンという名だった。
それから、いちばん年下に女の子(妹)がいた。この子を
ほんとうにゲニグヴンたちが誘拐してしまったそうだ。
家にいたのだったが、
家にいたところをゲニグヴンたちが奪っていった。
家にいたのに。
家にいたのだ。母はベリー摘みに行っていた。
その子供の兄たちを一緒に残して、ベリー摘みに行っていた。
帰ってきたら子供がいない!
兄たちは叫び声をあげて呼び、泣き叫んでいて、子供はいない。
妹はいなくなった。家の外で遊んでいたら妹がいなくなった。
それから今は、
その子供は、ゆりかごに入っている年齢の子供だったが、その
子供がいなくなったので、その家では
あのゲニグヴンの家のそばまで行った。
ひとびとはそこへ行って、
木だか何かを持って
この家に入った。
「ゆらゆらゆらり
ゆらゆらゆらり」
こんなふうに子供をあやした。
中では
小さな子供が泣いていた。
今までいくら探しても
その子供の声は聞こえなかったのに、この家で
そのゲニグヴンの家に
来てみると、子供のゆりかごが揺れていたのだという。
それでそのとき、
巫術者が、
巫術者が、それはトゥミ川筋に住む巫術者だったが、
巫術用の太鼓で(それを持って)
ルン地方へ来ていて、巫術者は歌った。
巫術者は歌って言った。
「わかった。この、ウイルタ人の子供を
この婆さんがひとりで
家に住んで、暮らしていたが、
(ひとりが)嫌になって、彼らの子供を盗んで連れて来た。そして一緒に住んでいるのだ。
そのうち、子供には夫となるべき者を連れてきて結婚させようとしているらしいぞ。
立派な女性に成長したならば」
と、その巫術者は言ったそうだ。
(子供を)盗んで連れて来たこの婆さんは、
(ひとりが)嫌になって、ウイルタ人の子供を盗んで連れて来た。
自分の子供として育てていたそうだ。
そうして今や彼女に、夫を与えようというのだそうだ。
このゲニグヴンたちは
チャイヴォ村へ行ってしまった。仲間たちはチャイヴォへ行った。
チャイヴォ地方に行ってしまったのだそうだ。
婆さんだけがひとりで暮らしていたそうだ。
チャイヴォ地方に、このゲニグヴンたちは、
引越ししてしまった。チャイヴォ地方に行ってしまったそうだ。
そいつらか、別の者たちか、
引越しして行った、ゲニグヴンたちだろうが
自分の犬を呼んだそうだ。自分の犬を呼んで、
「トゥルクス!トゥルクス!トゥルクス!」
と犬を呼んで行ったそうだ。
ずうっと遠くのほうへ
ゲニグヴンたちは引越しして行ってしまった。
「トゥルクス!トゥルクス!トゥルクス」
と、犬を呼んで(一緒に)行ってしまったそうだ。
どうしたんだろう、そのトゥルクスとかいうのは?
自分の家で飼っていたのに。何でいないんだろう?
「トゥルクス!トゥルクス!トゥルクス!」
こうやって叫んだ。
自分の犬を呼んで行ったそうだ。引っ越してしまった。
私はここまでしか聞いていないんだ。この昔話は。
ゲニグヴンの昔話を話したんだよ、いまのはね。